東洋医学の基本は気血津液です。
その中でも今回は津液について解説します。
津液は身体の水分のことですが、単なる水分のことではありません。
そのため単に水分を摂取するだけでは津液の問題は解決されないのです。
津液の不足は様々な不調の原因になっています。
今回は、そんな津液について解説します。
身体の水分
津液とは体内にある全ての水分を指します。
水分とは言っても体内の色々なところに存在しています。
体重の60%は水分で出来ており細胞内外に液体が存在し、様々な役割があります。
細胞は体内を循環する細胞外液から酸素や栄養素を受け取り、エネルギー代謝によって産生された老廃物を排泄します。
細胞外液は0.9%の食塩水に近い組成をしています
この0.9%の比率が変化すると細胞に大きな影響を与えるので、生命を維持するためには細胞外液の量と質を一定に保つことが重要になります。
細胞外液量が増加すると、浮腫や心不全(心気虚)、肺水腫、血圧の上昇などを起こし、細胞外液量の低下は血圧の低下などを起こします。
体重にの約60%を占める水分は主に水と電解質で組成されており、
- 40%は細胞内液
- 15%が間質液(細胞外液)
- 5%が血液
に存在します。
電解質とはNa+(ナトリウムイオン)やK+(カリウムイオン)などのミネラルなどのことです。
細胞内液は細胞膜の内側で細胞が機能するために必要な水分です。
対して細胞膜の外側にある細胞外液は、細胞外にある体内の内部環境を維持するために必要な水分です。
電解質と呼ばれる成分の内容をみると、
- 細胞内液の陽イオンはカリウム(K+)で陰イオンにはリン酸(PO4–)
- 細胞外液の主陽イオンはナトリウム(Na+)で陰イオンは塩酸(Cl–)や重炭酸(HCO3–)
などが多くなり、細胞の内外で電解質の内容は違っています。
このような体液の水分と電解質は常に一定に保たれています。
飲水や食事から取り入れられた水と電解質は、細胞外液で過不足を判断されて腎臓に伝えられます。
その上で過剰な分は尿や汗、便として体外に排泄され、欠乏しているなら腎臓で再吸収が行われます。
東洋医学の津液とはこういった水分の動きに着目した概念です。
日々の水分と電解質の推移
よく一日の水分や電解質の摂取量はどのくらいが適正かと議論になります。
ですが実は身体にはかなりの許容量があります。
経口摂取による一日の水分は0~30ℓと言われ、腎臓が元気ならかなりの幅があるのが分かります。
また電解質である塩分やカリウムなども0~30gとかなりの幅があります。
ただし水分にしても電解質にしても腎臓や腸などの機能が万全の状態である上での理論値です。
一日に排泄される水分は平均で2.5ℓにも及びます。
失われる水分を飲んで補給しようと思えば、一日に1.2ℓは不可欠となります。
まして夏に汗を大量にかくときにはもっと必要です。
目安として体重の3%の水分補給が必要と言われるので、60Kgの人なら一日に1.8ℓとも言われます。
日々の尿と便だけでも約1.3ℓが失われていると言われます。
この量は少なくなると腎臓に負担がかかります。
水分をとるとトイレが近くなるから困るという人もいますが、1日に7回くらいは尿を出さないと身体に尿酸が溜まって身体に悪影響を及ぼします。
また気づかないうちに汗や呼吸からも水分を失うので、喉が渇いていなくても水分を補給する癖をつけましょう。
水分をとらなくても平気という人もいますが、それは身体が頑張って調節してくれているからです。
水分不足は身体に大きな負担となりますが、元気でいられるのは腎臓の調節機能が働いているからです。
津液とは
東洋医学における津液とは唾液や胃液から、関節腔や腹腔内の液体、涙や汗、尿などの全てを含めた組織液を指しています。
この津液の概念になると、水分をとるのは身体の老廃物を排泄するだけでなく関節の動きを良くする効果も含めているということになります。
体内における水分はリンパであれ関節液であれ全てが相互に影響していると考えています。
また血(栄養)の働きを補完するものと考えています。
津液の流れは気(代謝)によって調節され、気が不足すると尿や汗による津液の漏出が止められなくなります。
津液の主な作用は身体の各所を潤すことで滋潤作用と呼ばれます。
津液による滋潤作用は、
- 皮膚や毛髪
- 粘膜
- 関節内
- 組織間
などを潤します。
涙が目を潤したり、唾液が口腔内から喉を潤したりするのも滋潤作用です。
また見えないところでは内臓を潤したり、関節の動きを円滑にしたりします。
東洋医学では血は血管内を流れるもので、津液は血管の内外を流れるものとしています。
津液が不足すると
津液による滋潤作用が不足すると様々な不調が見られます。
脱水症状なども津液の不足に該当します。
その他にも、
- 高熱
- 炎症
- 激しい下痢や嘔吐
- 利尿剤
- 慢性病
などが原因で津液は不足します。
高熱による発汗で津液が失われたり、炎症によって老廃物が増えて水分の割合が減って流れが悪くなった状態が陰虚です。
また利尿剤などで無理に尿を出すと津液の不足を引き起こす場合があります。
病気が原因で津液が不足する場合もあります。
特に糖尿病や尿崩症などのホルモンバランスの乱れは津液を不足させます。
津液が不足しだすと本来なら喉が渇きますが、現代人は喉の渇きに鈍感な人が増えています。
一回当たりの尿量が減少したり、便が硬くなったりする場合は水分の補給が足りていないことが多くあります。
他にも唇がひび割れしやすくなったり、皮膚の乾燥が強くなったりするのは津液の不足です。
津液の不足が深刻になると、めまいが起こったり筋肉の痙攣(けいれん)が起こりったりします。
東洋医学では津液の不足を陰虚(いんきょ)と呼びます。
陰虚になると、
- 顔がほてる
- 不眠
- 耳鳴り
- 空咳
などが起こります。
トイレに行って尿量が少なく黄色味が強い時は陰虚を疑いましょう。
また普段は排便に問題が無い人が便秘気味になったり、便が乾いてコロコロ便になったりする時は水分を補給しましょう。
陰虚と併発する症状
東洋医学では一つの症状が単独で現れるとは考えません。
陰虚と並行して起こる症状として血虚(けっきょ)が潜んでいる場合もあります。
血虚とはホルモンバランスの乱れや栄養不足などの状態です。
陰虚と血虚が同時に起こると、
- 栄養不良
- 脱水
- 自律神経の興奮
- 代謝の過剰
などが原因となり身体に熱がこもります。
これは虚熱と呼ばれ、体調不良で身体が火照っている状態です。
こうなると胸の苦しさやイライラなどの症状も伴います。
水分の流れが悪い状態
身体が冷えて水分の滞りが起こることもあります。
冬に関節の動きの悪さや痛みを伴う場合は津液の流れが悪い痰湿が原因です。
身体の余分な老廃物が排泄されないせいで、津液の流れが悪くなり身体に問題を起こしています。
東洋医学では痰湿(たんしつ)と呼ばれる状態です。
痰湿になると、
- 痰や唾がよく出る
- 乗り物酔いをしやすい
- 身体が重だるい
- 足がむくみやすい
などの症状が起こり、特に雨の日に悪化しやすいのが特徴です。
痰湿の解消には塩分やアルコールの過剰摂取を控えましょう。
また発汗を促すように有酸素の運動を行い身体を温めることが重要となります。
当院では気血津液を整えるスマート筋トレを推奨しています。
膝が腫れて痛む人は、まずは身体を温めて痛くない範囲で動きましょう。
まとめ
津液は単なる水分のことではありません。
膝の関節液も胃酸も津液の概念には含まれます。
そのため単に水分補給をするだけでは津液の流れが正常になりません。
大切なのは汗や尿などの排泄を促せるように運動して気を高めることなのです。