東洋医学の基本は気血津液です。
「東洋医学をもっと知りたい!」という人は避けて通れません。
その中でも気は最もややこしい概念です。
宇宙を構成する物質だと言ってみたり、身体を構成する基本だったりと色々な説明があります。
私は気の全てを説明するのではなく、身体の健康を保つのに必要な面に絞って解説します。
気とは
東洋医学では、
気は宇宙を構成する最も基本的な物質であり、
全ての事物は気の運動と変化によって生産される
と考えられてきました。
これだけ聞くと何のことか分かりませんが、気は人間の身体の中でも作られるものとされています。
そのため私は、気は粒子の概念もあれば、ATPのようなエネルギーのことでもあると考えています。
気の概念が成立したのが2000年以上も昔のことなので、どうしても曖昧な部分が多くあります。
また気は、
脾胃が運化した水殻の気と肺の吸入した清気が
先天の腎気と結合して生成される
とあります。
水殻の気とは飲食物を消化した栄養で、清気とは空気のことです。
両者を合わせて後天の気と呼ぶことから、日々の代謝によって生まれるエネルギーであると言えます。
腎気とは成長、生殖などに必要な生命エネルギーで先天の気とも呼ばれます。
そのため先天の気とは遺伝的に受け継いだエネルギーと言えます。
ですが、この理論のままでは理解しづらいので現代的に解釈してみます。
私は独自の解釈で気は代謝のことで、身体の恒常性を維持する自律神経の働きとして捉えています。
もしくは自律神経を伝達する神経伝達物質が気の一部とすると説明しやすくなります。
また血は消化吸収した栄養であり血(栄養)と表現し、体内で作られたホルモンなどと解釈しています。
津液は体内における水分なので大きな違いはありません。
代謝とは
気を代謝と捉えるのは、気の説明が代謝によって生み出される様々な成分だからです。
身体を温める熱や神経伝達物質は代謝によって作られます。
そして気の働きを自律神経と捉えれば、自律神経による身体の器官の働きを調節する作用が説明できるからです。
自律神経が乱れ交感神経が強く作用し続けると身体に不調が現れます。
交感神経が優位になった自律神経失調症は気滞(きたい)の症状と似ています。
気(代謝)が不足すると、血流が悪化してむくみや冷え性などを招き血虚(けっきょ)の状態になります。
自律神経を整えるのも気(代謝)を高めるのも入浴や十分な睡眠が基本となります。
身体を温めて副交感神経を優位にすることが自律神経を整えて気(代謝)を高めます。
また運動も自律神経を整えて気(代謝)を高めるのに効果的です。
運動は自律神経の安定や太りにくい体作りに有効だとされています。
自律神経は自分の意識とは無関係に心臓などの器官を維持しています。
自律神経は交感神経と副交感神経という逆の動きをする2つの神経が、交互に優位になることでバランスを取っています。
ですが、不規則な生活やストレスなどで自律神経の切り替えがうまくいかなくなるとバランスが崩れます。
自律神経の働きが低下した状態を気虚(ききょ)と呼び、自律神経のバランスが崩れた状態を気滞と呼びます。
自律神経のバランスが崩れると、休息していても身体の緊張がとれません。
すると身体は徐々に疲労が蓄積されて様々な不調が現れます。
結果として内臓の機能も低下することで本格的に身体は不調になるのです。
気の影響
気(代謝)が高ければ生命エネルギーに溢れており、心身の活動が活発になります。
気(代謝)が不足すれば
- 消化
- 吸収
- 排泄
などが正常に行われません。
そのため気(代謝)の不足は過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなどの原因となり、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアは自律神経が乱れたときの症状です。
また気(代謝)は血(栄養)や津液(水分)を巡らせるためにも必要です。
気(代謝)は体温を正常に保ったり血流を調節したりします。
そのため気が上手く巡らないと精神症状が強く出ます。
気の流れが滞った状態は気滞と呼ばれ、頭部や首肩などの症状として現れます。
頭部から首肩にあるのは中枢神経と呼ばれる自律神経のメインの部分です
気の作用は
- 推動作用(すいどうさよう)
- 温煦作用(おんくさよう)
- 防御作用
- 固摂作用(こせつさよう)
- 気化作用
などです。
推動作用とは成長や発育を促すために血液や津液を循環させる機能です。
血や津液の滞りは推動作用の低下によります。
温煦作用とは血液循環やエネルギー代謝を通して体温を一定に保ちます。
防御作用とは病原菌などの侵入を阻止したり、侵入してしまった病原菌に対して白血球などで排除する働きです。
固摂作用は血液や津液が体外に漏れ出さないように調節したり、内臓を正しい位置に固定したりします。
汗や尿などが過剰に漏れないように調節します。
そのため固摂作用が低下すると多汗になったり頻尿になったりします。
胃下垂などの内臓の位置が下がるのも固摂作用の低下です。
気化作用は血液や津液を汗や尿に代謝する働きです。
気に関する症状
気が不足した状態を気虚(ききょ)と呼んでいます。
気虚になると元気がなくなり疲れやくなります。
気が不足すると固摂作用が働かず汗をかきやすくなったり、温煦作用が働かず寒がりになったりします。
また推動作用が働かないと消化器系が働かないので食欲不振や消化不良を起こします。
先天的に虚弱な人もいますが、老化や過労によって気虚に陥る人もいます。
気が不足するのは問題ですが、気が十分でも流れが滞っても問題となります。
気が滞った状態は気滞(きたい)と呼ばれ、頭痛やイライラなどが現れます。
気滞の原因としては、肝臓の機能低下や痰湿(たんしつ)などが潜んでいます。
または気の元である自律神経系の乱れが潜んでいます。
女性であれば月経痛が悪化するのも気滞の症状です。
まとめ
気(代謝)は特別な存在ではありません。
日々、身体を調節してくれる身体の機能です。
「日々を健康に過ごしたい!」
という人は気を意識しましょう。
そんな気(代謝)の作用は高めることも可能ですが、無理をしていると低下していきます。
だから普段から気(代謝)が下がらないように気を付けることが健康を維持するのに効果的なのです。