東洋医学では気血津液を巡らせるのは肝心脾肺腎と言われます。
その中でも心臓は血(栄養)を巡らせるうえで重要な役割と果たします。
さらに東洋医学では心臓が精神的な役割を果たすと考えています。
今回は、そんな心臓について解説します。
心臓の特徴
心臓は循環器系に属する内臓です。
循環器とは血液の循環する心臓と血管からなる血液系と、リンパが毛細リンパ管から静脈に流れ込むリンパ管系とリンパ節からなるリンパ系とに分かれます。
血液系では心臓がポンプの役割を果たし、血液が動脈を通じて全身に送られ静脈を通って心臓まで戻ります。
心臓から血液が全身へと送り出されると、血液は肺で酸素を受け取ります。
血液が心臓から出発して全身を巡り再び心臓に戻ってくる間に、様々な栄養を運んだり老廃物を受け取ったりします。
東洋医学の血(栄養)とはこれらの栄養や老廃物を指します。
また体温を調節するために心臓の拍動数を調節します。
さらに受け取った二酸化炭素を肺から放出したり、腎臓でろ過して尿として排泄させたりします。
この重要な血液の流れは心臓だけでなく筋肉も助けます。
血液の流れを助ける筋肉の作用はポンプ機能と呼ばれます。
筋肉のポンプ機能が低下すると血流は滞りやすくなり心臓の負担が増えます。
交感神経が昂ぶると
- 拍動数が高まる
- 血管が収縮する
- 血圧が上昇する
- 毛細血管が収縮する
などの変化が起こります。
入浴中や睡眠中などはリラックスすることで逆の反応が出ます。
結果として、身体は興奮状態となり、心拍数が増加し心臓の収縮が強くなります。
昼間の活動時や運動時などのように交感神経が優位なときは、心臓が活発に動いて全身の血流が速くなります。
睡眠時や安息時などのように副交感神経が優位なときは、心臓の動きも落ち着いていて全身の血流も穏やかになります。
心筋は横紋を有する不随意筋で、骨格筋と平滑筋の中間に位置する筋肉と言われます。
特徴としては、心筋の電気抵抗は極めて低くいので細胞で発生した活動電位は短時間のうちに全ての心筋細胞に伝わります。
そのため心臓は自律神経からの指令も素早く受け取り反応します。
ミトコンドリアを多く含むことも心筋細胞の特徴で、心臓は生涯休むことなく拍動し続けるために大量の酸素を使ってミトコンドリアを効率よく働かせています。
自律神経の影響
人間は精神的なストレスや肉体的なストレスを受けると交感神経が優位になります。
その結果、心筋が強く収縮力したり心拍数の増加が起こったりします。
通常なら瞬間的に交感神が興奮しても、副交感神経が働くことで心臓は元の状態に戻ります。
ですがストレスが長く続いたり、非常に強いストレスがかかったりする場合は交感神経の興奮状態が治まらなくなってしまいます。
交感神経の興奮が続けば心臓にかかる負担が大きくなり、
- 動悸
- 息切れ
- 胸の圧迫感
- 胸痛
などの症状が現れます。
さらに心臓が弱ると不整脈が頻発するようになります。
東洋医学では心臓の気(代謝)が低下する心気虚(しんききょ)で心悸(しんき)が起こると言われます。
不整脈は高齢者に見られる心臓が弱ったことで起こる疾患です。
この不整脈は自律神経のアンバランスが原因で起こりますが心臓の機能には異常が見つかりません。
そのため発見が遅れやすい疾患です。
心臓のエネルギー源
人間の身体はエネルギーの大部分をATPから獲得します。
心臓は多くの酸素を消費して1日に約35 kgものATPを産生します。
心筋は血(栄養)から得る酸素摂取率が70%で、他臓器の平均25%に比べるときわめて高い事が分かります。
それだけ伸筋で使われるエネルギー量は多いのです。
ATP産生は通常なら
- 脂肪酸が約60%
- グルコースが約30%
- 乳酸が約10%
の割合でATPを産生します。
食事後にはグルコースがエネルギー産生の70%を担い、30%を乳酸が担い脂肪酸の利用はほとんど無くなります。
さらに激しい運動時には血中の乳酸が上昇するので、エネルギー産生の60%を乳酸が担い、グルコースは15%、脂肪酸が20%程度と大きく変化します。
また絶食時にはミトコンドリアによるATP産生を増加させます。
心臓と脈拍の関係
最近の研究では1分間の脈を測ると寿命が分かると言います。
1分の心拍数が60回で約73年、70回で約63年、80回で約55年の寿命になるとのことです。
また高齢になればなるほど心臓の機能は低下して、一般的には心不全と呼ばれる状態になるので注意しましょう。
年をとると加齢現象で心臓の筋肉が硬くなり弾力性がなくなってしまいます。
心臓だけでなく肺の血液も滞りやすくなります。
年齢とともに動脈硬化が進むと心筋梗塞や弁膜症が起こりやすくなり、心不全を引き起こす心臓病の頻度も高くなります。
心不全になると肺の血液が滞るので、少し動いただけで息切れや動悸が出てきます。
ひどくなると安静にしていても息が苦しくなったり、咳が出るようになったりします。
さらに肺だけでなく全身の血液が滞ると足がむくんだり、おなかが張ったりします。
心臓のポンプ機能のが正常であれば血液を全身に送り出すことが可能です。
ですが高齢者の場合は、血液を送り出す駆出率は正常で心臓はよく動いているのに心不全の症状を起こす場合もあります。
これは心臓の筋肉が硬くなっていたり高血圧や糖尿病の合併が潜んでいたりします。
恋による動悸
恋をすると心臓がドキドキする事がありますが心臓には問題はありません。
異性を前にしてドキドキするのは、脳の偏桃体と呼ばれる感情を司る部分からアドレナリンが分泌されているからです。
初対面の人と会う時の緊張によるドキドキも同じく偏桃体からのアドレナリンの分泌がきっかけとなります。
年を重ねるとときめいているのか動悸か分からなくなるのは、どちらも心拍数の上昇という状態が起こっているからなのです。
恋愛相手となり得る相手には気を使います。
自分の言葉や態度を選ぶことが緊張へとつながりアドレナリンの分泌を促します。
よく恋愛のテクニックで吊り橋効果と呼ばれるものもアドレナリンの分泌を利用しています。
アドレナリンが分泌される時には、快楽を感じるドーパミンも同時に分泌されます。
そのドーパミンによる快楽を味わいたいから、また会いたいという衝動に駆られるのです。
そしてドーパミンはアドレナリンの原料でもあるので、好きな気持ちがどんどんと膨れ上がるようになるのです。
東洋医学における心の役割
心の一番の役割は血(栄養)により身体を温めることです。
血液の正常に流れるように管理し、血液の生成を行うと考えられていました。
心の機能が低下すると、動悸や脈が速くなるなどの症状が起こります。
また東洋医学の考え方で心は
- 無意識
- 情報処理
- 考え方
のコントロールを行います。
現代なら脳の働きと考えられていたものが、東洋医学では心の役割とされています。
精神不安は血行不良を引き起こし顔色が悪くなるので、精神活動と血流の関係は古くから着目されていたのです。
現代医学の観点からも精神面と心臓の関係は解明されています。
実際に配偶者の死などの精神的ストレスが心臓病の悪化を招く事はよくあります。
一般的に配偶者の死は最も強い精神的ストレスと言われます。
精神的ストレスは心臓病の重要な危険因子であり、心臓が弱る事で自律神経失調症やうつ症状が発症すると考えられています。
心臓病の方の多くは抑うつ症状を抱えていることが明らかになっています。
また抑うつ症状のある人は、そうでない人に比べて1.5倍も心筋梗塞になりやすいことが分かっています。
東洋医学から見た心の不調は、
の三種類があります。
心血虚が起こると自律神経失調症や睡眠障害などが起こりやすくなります。
普段から悩み過ぎる傾向にある人ほど血(栄養)を消耗しやすくなります。
心陰虚は陰虚とは水分不足の状態で血液のドロドロ状態を指します。
寝汗や夢見が多くなるなどの睡眠の低下が見られます。
心気虚は加齢による心臓の弱りがきっかけで、普段から運動不足の人は特に心気虚が悪化します。
加齢に伴い心臓の体積は少しずつ増大し心臓の壁は厚くなっていきます。
年齢を重ねると動脈と細動脈の弾力性が失われます。
加齢による心臓と血管の変化の多くは定期的な運動によって軽減することができます。
何歳になっても普段から運動する習慣をつけることは心血管系の健康を維持する上で重要です。
まとめ
心臓は血液を送り出す単純な構造です。
ですが弱る原因はいくつかあり、気を付けていないとどんどんと弱ります。
意識して運動をする習慣が心臓を元気に保ちます。