「何となく身体がだるい」
「原因は分からないけどめまいがする」
「頭痛はしょっちゅうだ」
どんな症状でも東洋医学で重視しているのは気血津液です。
その中でも津液(水分)の不足は気(代謝)の低下を招きます。
そのため津液(水分)は生命を維持するのに極めて重要です。
今回は、そんな津液(水分)について解説します。
陰虚とは
陰虚とは津液(水分)が不足している状態です。
津液は身体を潤す全ての水分を指します。
陰虚は水分の摂取が不足している場合もありますが、汗のかきすぎなどで消費が激しい場合もあります。
さらに津液は年齢とともに徐々に減っていくので若い時と同じ生活を送っていると身体は徐々に陰虚の状態になっていきます。
陰虚になると
- 汗をかきやすい
- 肩こりや頭痛
- 疲労感
などが現れ慢性化します。
東洋医学の言葉では、
陽は独立し得ず、陰を得てなる。陰を主とし、陽はこれを随う。
これを訳すると代謝を高めるには身体の水分を増やすことが大切という事です。
つまり代謝が不足して冷え性の人は、実は水分不足のために代謝が低い可能性があるということです。
冷え性と聞くと多くの人は代謝を上げる食材を食べようとしますが、身体が必要としているのは水分であることもあるのです。
五蔵を傷つければ、命の源である精を保持することができずに陰虚(水分不足)の状態になり、陰虚の状態になれば気(代謝)がなくなり、気がなくなれば死ぬ。
霊枢
訳すると内臓の機能低下が津液の不足を招き、陰虚の状態は気虚(ききょ)の状態を招き寿命を迎えるという事です。
逆に気虚の状態だと身体の陰を作ることが出来ずに陰虚になり、年齢とともに気虚が悪化して身体の津液は不足していきます。
そして津液の不足によって内臓の機能は低下して、次に気(代謝)の低下を招きます。
寿命とは最低限の気(代謝)を保持できなくなった時に迎えると考えられていました。
気(代謝)を高めるために始めにすることが津液(水分)を補う事なのです。
陰虚(水分不足)で起こる症状
陰虚は脱水症状とも言えます。
主に生活習慣などが原因で起こりますが、加齢に伴って起こりやすくなります。
つまり高齢になると若い時同じ生活では脱水状態になりやすいと言えるのです。
内臓で陰虚が起こると、
などと呼ばれます。
内臓の陰虚は腎陰虚が進むことで悪化しやすくなります。
これらの内臓は津液の不足の影響を強く受け、陰虚は水分不足なので喉が渇いて水分を欲しがります。
ですが水分をとっても、なかなか渇きが治まらないのも陰虚の特徴です。
陰虚になると口や鼻喉の粘膜も乾燥するので、口の中がネバネバしたり唇がカサカサしたりします。
また喉がイガイガして咳が出やすくなります。
皮膚も粘膜同様に潤いを好むので、陰虚の状態になると皮膚もカサカサします。
便が硬くなったり尿が少なくなったりするのも水分不足です。
津液は身体を潤す成分ですが、潤いを維持するためには粘膜はかなり重要です。
陰虚と併発する症状
陰虚になると熱が頭にこもりやすくなり気滞(きたい)の症状も引き起こします。
気滞は自律神経の乱れなので不眠や耳鳴りなどの原因となります。
東洋医学の証による分類を見ると似たような症状があるのが分かります。
それは一つの証が単独で出るよりも、複数の証が併発して起こりやすいためです。
睡眠は身体に津液を巡らせる効果がありますが、陰虚の人は巡らせる水分が足りないので睡眠の質が低下します。
普段から睡眠不足の人が不眠症になるのは、身体が津液(水分)不足の陰虚の状態になっているためです。
夜のうちに身体の水分が隅々まで巡ってこそ、朝に身体の代謝は盛んになり自然と目が覚めて元気に動けるのです。
朝から常にだるさがあり様々な不調に悩まされている人は陰虚(水分不足)を疑いましょう。
津液(水分)と汗
普段から汗をかいている人と、汗をかいていない人では含まれている成分が違います。
現代人は多くの人が運動不足と空調のために汗をかかなくなっています。
汗の本来の機能は気化熱を利用して体温を下げることです。
そして汗は血液の液体成分である血漿(けっしょう)という成分が元になっています。
血漿は99%以上が水分ですが、
- ナトリウム
- カリウム
- カルシウム
- マグネシウム
などのミネラルも含みます。
ミネラルは体に必要なものなので、本来ならミネラルは再吸収されることで汗としては排出されません。
サラサラで流れるような汗はミネラルを含んでいないのです。
対して、ベタついて臭いのある汗には再吸収できなかったミネラルが含まれていて身体からミネラルが失われています。
汗をかく習慣があまりないと、汗腺が衰えミネラルの再吸収が出来ません。
おまけにミネラルの濃度の濃い汗は大粒になって蒸発しにくいので、体温調節がうまく出来ずに大量の汗をかくことになります。
また気滞(きたい)のように自律神経が乱れていても大量の汗をかいたり、逆にまったくかかなくなったりすることもあります。
バセドウ病では、過剰に分泌される甲状腺ホルモンの影響で代謝が高まり大量の汗をかきます。
また、更年期で女性ホルモンが減少している女性にはホットフラッシュと呼ばれる、急激な大量発汗が見られることもあります。
女性ホルモンのエストロゲンには発汗を抑制する働きがあるからです。
津液と湿の違いは身体に必要かどうかです。
東洋医学では身体に必要な水分では津液と呼ばれ、身体に不要な水分は湿と呼んでいます。
津液を増やすには
そして津液とは単なる水そのものではなくて、水をもとに作られた潤い成分です。
だから水を多く飲んでも津液が多く作られるわけではありません。
津液を増やすには、薬膳であれば生津作用を持っている食材をとります。
また身体の津液を保持して潤わせる作用を滋陰作用と呼びます。
一時的な水分不足には生津作用で足りますが、水分を作る力だが失われているときには滋陰作用があるものを食べましょう。
睡眠をとるだけでも生津作用がありますが、水分を作れない時には滋陰作用がある食事が必要です。
人間の身体は60%が水分なので水分不足は身体に深刻な影響を与えます。
特に水分不足は内臓の機能にも深刻な影響を与えます。
そして水分には老廃物の排泄を促すのでしっかりと水分を摂って排泄を促さないと身体の回復が起こらないので注意しましょう。
良い粘膜はビタミンAとオメガ3脂肪酸から作られます。
オメガ3脂肪酸とはEPAやDHAなどの青魚に含まれる脂質です。
また漢方では山芋や蓮根、オクラのようなネバネバした食べものが身体の潤いを補うと考えられていました。
ただし山芋はできるだけ加熱せず、生に近い状態で食べるのがおすすめです。
陰虚を解消するにはみずみずしい状態でいただくというのが基本です。
他にも白色の食材は肺の働きを助けると考えられています。
その中でも白きくらげやゆり根、梨などは身体に潤いを補います。
またアーモンドや落花生などのナッツ類も身体を潤すと考えられていたのは、オメガ3脂肪酸を意識していたと考えられます。
まとめ
陰虚とは身体の水分不足ですが、水分を補給するだけでは問題解決にはなりません。
大切なのは身体から水分を失わないように、発汗をコントロールして良い粘膜を作ることです。
そのため日々の食事と生活習慣がポイントとなります。