「健康には丹田が重要です」
そう聞いたことはありませんか?
丹田とは東洋医学に限らず多くの伝統医学で重視されているポイントです。
ツボなどとは違って丹田はピンポイントではなく大まかな場所を示します。
今回は、そんな丹田と呼ばれる自律神経を整えるのに効果的な呼吸を解説します。
呼吸とは
呼吸は自律神経に影響を与え、息を吸うときには交感神経が刺激され吐くときには副交感神経が働きます。
そのため息を吐く方を長くしたほうが身体はリラックス出来るのです。
つまり、息を吸えば身体は緊張し脈拍がやや速くなります。
逆に息を吐くときは、身体はリラックスしやや遅くなります。
また息を長めに吐くと、血中の二酸化炭素の濃度が高まり精神の安定をもたらすセロトニンの分泌が増えます。
普通の呼吸は、首とか胸部にある呼吸筋と横隔膜が無意識のうちに動いています。
東洋医学の呼吸法は、吐く息を重視するので横隔膜と腹筋群を大きく動かす腹式呼吸になります。
腹式呼吸とは
腹式呼吸には、
- 順腹式呼吸
- 逆腹式呼吸
があります。
順の腹式呼吸は、吸う時にお腹を膨らまして、吐く時にお腹を凹ませます。
逆腹式の場合は、吸う時にお腹を凹めて、吐く時に膨らませます。
このお腹の動きが、丹田を意識するということに繋がります。
東洋医学の丹田とは、おへその下3cmくらいの場所で気(代謝)を高めるのに大切な場所と考えられています。
丹田とは不老長寿の薬である丹薬を意味する丹と、丹を作る場所を意味する田という言葉が合わさっています。
つまり丹田を意識することが不老長寿につながるという考え方です。
実際に丹田に圧力を加えると、腹部大動脈に圧がかかるので血流を良くして動脈の老化を防ぐことが可能です。
呼吸による精神統一
精神を統一するためには、
- 飲食の調節
- 睡眠の調節
- 姿勢の調節
- 呼吸の調節
- 心の調節
が必要とあります。
飲食と睡眠の調節は生活習慣です。
残りの三つはそれぞれ調身・調息・調心と呼ばれ三つでワンセットです。
坐禅の姿勢が悪ければ効果がなく、きちんとした姿勢でこそ息が調います。
姿勢と息が調ってこそ気持もだんだんと静かに静まっていきます。
だから心だけを落ち着かせようとしてもうまくいきません。
心を調えるには呼吸を整える必要があり、呼吸を調えるには姿勢を調えなくてはいけません。
これは東洋医学の身心一如(しんしんいちにょ)と言う考え方です。
身体と心は切り離せないので、どちらかだけを調えるのではなく、身体と心は同時に調えないと意味がないのです。
心の調え方
心を調えるには、
- 頭の熱を下半身に落とします
- 身体の力を抜きます
- 繊細な呼吸をします
以上の順番が大切です。
頭に血が昇った状態は心火(しんか)と呼ばれ交感神経が優位な状態となり、長く続くと鬱状態の原因になります。
だからまずは頭に昇っている血を下に下げるのです。
意外に難しいのが身体の力を抜くことです。
力が入った状態は身体の凝りとなり万病の元となります。
最後に身体全体が呼吸しているイメージをします。
実際に身体は皮膚呼吸を通して、身体全体で呼吸をしています。
皮膚呼吸を自覚するのは難しいので、まずはイメージから始めましょう。
心が安らかになってきますと、呼吸も繊細になります。
繊細で穏やかな呼吸を意識すると、静かにスーッと息の長い呼吸ができてきます。
そして、呼吸が調えれば万病を避けられると考えられています。
身体の緊張を緩めて、頭の血を降ろします。
調身がうまくいっている状態を上虚下実(じょうきょかじつ)と言います。
頭では考えすぎない虚の状態で、下半身にはしっかりと力が入っている実の状態です。
この状態だと下腹部の丹田に力が入り、最も身体の気(代謝)が充実します。
太極拳や坐禅は調心に重点をおいています。
内気功は自分の気(代謝)を高める方法で、
- 静功
- 動功
に分かれます。
静功には動きの少ない坐禅が分類され、動功には複雑な動きの太極拳が分類されます。
気が滅入って何もやる気にならない時には、心を丹田の方におけばいいとされます。
こういうような状態にして、呼吸をすると自然と穏やかな呼吸となります。
ちなみ坐禅が心身に良い効果をもたらすとは言っても、やり過ぎれば神経衰弱を招きます。
神経が衰弱すると頭は混乱しのぼせ足が冷えて耳鳴りがします。
逆に普段から冷えのぼせを起こしやすく耳鳴りがする人は神経が衰弱しているのです。
つまり座禅も過ぎれば自律神経失調症になると分かっていたのです。
他にも内臓が疲れると幻覚を見たり両脇の汗や涙が止まらなくなります。
身体を鍛える要は、気を丹田気海に集中する丹田呼吸法と言われます。
貝原益軒の有名な養生訓には、
呼吸は人の生気なり。
呼吸なければ死す。
人の服中の気は、天地の気と同じくして、内外(ないげ)相通ず。
人の天地の気の中にあるは、魚の水中にあるが如し。
養生訓
とあります。
歩く時にも呼吸を意識して下腹を引き締めて、息を吸った時に腹から歩くと身体を調える効果があります。
調和道丹田呼吸法
腹式呼吸の一種で、
- みぞおちの下を凹ませてくびれを作る
- くびれの部分を軸に上体を前傾させながら息を吐く
- 息を吐きながら丹田を意識し腹圧をかける
- 上体を起こしながら息を吸う
呼吸は吐くのも吸うのも原則として鼻で行います。
東洋医学は自然治癒力を引きあげますが、自分で出来るのは呼吸法だけなので継続することが大切です。
大切なのはお腹をしっかりと動かしてお腹周りの筋肉と横隔膜に刺激を入れることです。
まとめ
腹式呼吸は知っている人が多いと思いますが、丹田を意識することで自律神経を整える効果がアップします。
自律神経を整えるために行うので、ゆっくりと心を落ち着けて行うことが大切です。
お腹を動かす癖がつくと自律神経が乱れにくくなります。