朝から力が出ない。
すぐに疲れてしまう。
栄養が足りてないんだろうか?
肝臓は多くの血(栄養)を蓄えている臓器です。
普段から多くの血液が流れ込んで様々な代謝が行われています。
そんな肝臓で血(栄養)が不足した肝血虚について解説します。
肝臓とは
肝臓は沈黙の臓器とも言われるほど自覚症状がなく痛みを感じない臓器です。
肝臓の働きは分解に代謝、解毒がメインですがビタミンの貯蓄と体温維持も重要な役割の一つです。
肝臓は体重の約1/50の重さで、貯蓄している血液量は全体の10~14%にも相当します。
東洋医学では肝臓に蓄えられている栄養を肝血と呼んでおり様々なものを含めて考えています。
食べた物から吸収した栄養素を処理して、糖質や脂質をエネルギーとして蓄えたり新たなタンパク質を合成したりします。
肝臓に蓄えられるものには
- ビタミンA
- アミノ酸の分解酵素(AST、ALT)
- アルブミンなどのタンパク質
- コレステロールやリン脂質
- グリコーゲン
などです。
疲労は肝臓と関係しています。
体内に老廃物が溜まった状態が疲労です。
肝臓はそんな老廃物を処理するために働いています。
疲れをとるというのは、肝臓の働きを高めて身体の老廃物を体外へ排泄する機能を促進することになります。
主な老廃物にはアンモニアやアデノシなどがあります。
アンモニアは肝臓で尿酸へと代謝されます。
またATPが代謝されてエネルギーを作り出すと、アデノシンという物質が作られます。
アデノシンは眠気を起こすと同時に肝臓の血管拡張作用を示します。
処理されなかった老廃物は脳の運動中枢神経を刺激します。
刺激された運動中枢は老廃物を増やさないために身体を休めさせる指令を出します。
疲労を回復させるのは肝臓
身体が感じる疲労感とは、
- 活動の低下
- 集中力の低下
- 不快な症状
などです。
疲労によって感じるのが眠気やダルさなどの活動の低下です。
次に集中力や思考力などが低下します。
同時に頭痛や肩こりなどの不快な症状が現れます。
そして疲労がたまると脳から休息の指令が出て肝臓の機能が高まります。
肝臓に血(栄養)を巡らせるには、
- 適度な運動
- 睡眠
が欠かせません。
1日に30分くらいのウォーキングやラジオ体操は大切です。
また質の高い睡眠が肝血を充実させます。
眠ると元気になるのは肝臓での代謝が盛んになるからです。
ですが日中の仮眠は肝臓の代謝を高めないので、昼寝は20~30分ほどにしましょう。
精神的ストレスが増えると交感神経が緊張します。
交感神経が優位なると肝臓に蓄えられた血(栄養)が消耗されます。
そのため副交感神経を優位に出来る睡眠時間は重要です。
肝血を充実させるには
必須アミノ酸のひとつリジンは肝臓の働きをサポートしてくれます。
肝臓の働きがスムーズになると脂肪酸を分解する働きが高まり、肝臓を保護する効果が期待できます。
アミノ酸のうち、
- バリン
- イソロイシン
- アルギニン
- グルタミン
は肝臓内の尿素回路の働きを高めアンモニアを尿素に変えます。
尿素になったアンモニアは体外に素早く排出され疲労回復となります。
肝臓が炎症などで傷害されると脳から信号が発せられます。
脳からの信号により肝臓内のマクロファージが刺激され肝臓の再生が促進されます。
肝硬変が起こると血流が悪くなります。
そうすると食道や胃などの消化管で血流は渋滞し、静脈瘤を形成する場合があり東洋医学では瘀血(おけつ)と呼ばれます。
消化管の血流は門脈を経て肝臓へ集まります。
消化管とは胃腸や脾臓、膵臓からの血液で門脈を経由して肝臓に流入します。
消化管で吸収された栄養分や毒物は肝臓へ集まり、代謝されたり解毒されたりします。
門脈圧が亢進すると胃粘膜内の血管が拡張したり、うっ血を生じたりすることにより発生してきます。
頻度は少ないですが、肝機能障害の強い人などは出血することもあります。
東洋医学の肝
東洋医学から見た肝の働きは疏泄(そせつ)と蔵血です。
疏泄とは流れを調節するという意味です。
つまり肝臓が調節しているのは
- 気(代謝)
- 情志(本能的な精神)
- 胆汁
- 血(栄養)
- 性ホルモン
などの五つの流れです。
情志は生活の環境や活動に対して発生した感情反応であり、怒り・喜び・思い・憂い悲しみ・驚き恐れなどの7つの感情を指します。
東洋医学では精神の働きを心と肝の2つに分けて考えます。
心は神志を主り大脳新皮質による理性や知性を担当し、肝は情志を主り大脳辺縁系による感情や本能に関係するとしています。
気血の観点からみると、心血は虚して心血虚(しんけっきょ)になりやすく、肝血は失調して亢進し肝気鬱滞(かんきうったい)を起こしやすいのが特徴です。
肝臓の蔵血には三大栄養素とビタミンA、マクロファージなどの免疫細胞と酵素が貯蔵されています。
AST(GOT)、ALT(GPT)は肝細胞で作られたアミノ酸を分解する酵素です。
γ-GTP は胆管でつくられる酵素でアミノ酸を分解する酵素です。
肝細胞が破壊されると血液中に放出されるため、その量によって肝機能を調べることができます。
他にもLDHは体内でブドウ糖がエネルギーに変化するときに働く酵素です。
ASTやALTなどは主に肝臓、心臓、腎臓、骨格筋、血球に異常が生じると、血液中に流れ出るため数値が高くなります。
他にもコリンエステラーゼ(ChE)は血中のアセチルコリンを分解する酵素です。
またコレステロールやリン脂質、中性脂肪などが肝細胞の脂質代謝で作られます。
血液中のビリルビンの大部分は廃棄された赤血球由来で、アルブミンと結合し肝細胞に取り込まれた後に胆汁中へ放出されます。
肝は血(栄養)と津液(水分)が必要な臓器と捉えられています。
血(栄養)と津液(水分)が不足して肝気の働きが抑えられると疏泄がうまくいきません。
結果として肝気が鬱滞します。
さらに血(栄養)と津液(水分)の不足が深刻になると体内に熱が蓄積し、肝陽が亢進して肝火が盛んになるなどの異常が現れます。
肝血虚になり肝血が不足すると、肝血が必要な眼がかすみ視力低下が出現します。
肝血虚が悪化すると肝陰虚を生じます。
また血虚は四肢の痺れや痙攣などの原因ともなります。
女性であれば肝血虚が原因で月経の量が減少したり月経が停止したりもします。
基本的には肝血虚の解消には貧血の薬膳と同じで
- ぶどう
- レバー
- ほうれん草
- イカ
などの摂取が大切です。
ブドウやレバーは養肝補血に分類され、血虚を解消して肝の機能を高めます。
ほうれん草やイカには養肝はありませんが、補血に補陰の作用があるので肝血虚から肝陰虚に悪化するのを防ぎます。
まとめ
肝血虚とは全身を栄養する肝血が不足した状態です。
肝血による滋養作用(栄養を与える作用)が低下し、それぞれの部位での機能低下を引き起こします。
肝血虚は心血虚の原因ともなるので早めの対処が大切です。