自律神経を調節するホルモンの中でもノルアドレナリンは交感神経を調節します。
ノルアドレナリンは三大神経伝達物質でもあり、身体にとって重要なホルモンです。
今回は、そんなノルアドレナリンを解説します
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリンは物事への意欲の源であり、生存本能に深く関係する神経伝達物質です。
ストレスに反応して怒りや不安、恐怖などの感情を起こしたり、交感神経を刺激して心身を覚醒させたりする働きがあります。
ノルアドレナリンの分泌が不足すると、気力や意欲の低下、物事への関心の低下など抑うつ状態になりやすくなります。
逆に分泌が過剰になると、怒りっぽくイライラしやすくなり高血圧症や糖尿病の原因になるとも言われています。
セロトニンはノルアドレナリンによる身体の興奮を落ち着けてくれます。
ノルアドレナリンはアドレナリンにもなります。
ノルアドレナリンは神経伝達物質として精神面に働き、アドレナリンは主にホルモンとして内臓などの肉体面の働きを調節します。
またドーパミンとノルアドレナリンはストレスに強い関わりがあり、ストレスを受けるとノルアドレナリンとドーパミンは同時に分泌されやすくなります。
アドレナリンとの関係
ノルアドレナリンとアドレナリンは似ていますが、神経伝達物質かホルモンかという違いがあります。
神経伝達物質は神経から神経へと情報を伝えるのに対し、ホルモンは血液に運ばれて全身に作用する物質です。
主に、ノルアドレナリンは神経伝達物質として、アドレナリンはホルモンとして働きます。
また、ノルアドレナリンとアドレナリンの生理作用は似ていますが、作用の強弱が異なります。
ノルアドレナリン血圧を上げる作用が強いのに対し、アドレナリンは心拍数を上げる作用と胃腸の運動を抑える作用が強めです。
ノルアドレナリンの最大の特徴は、気機を感じた時に身体を戦闘モードにすることです。
急に車が飛び出してくれば、ビックリして身体が反応して避けます。
このような危機反応はノルアドレナリンなどの分泌によって起こるもので、危機的状況でとっさに行動できるように身体が最適化されます。
極度に緊張しているときに食事が喉を通らなくなるのも、ノルアドレナリンなどの作用です。
ノルアドレナリンは、脳を覚醒させパフォーマンスを高めてくれます。
ノルアドレナリンにより脳が広範囲に刺激されると、
- 記憶力の向上
- 情報処理の速度がアップ
- 集中力を高める
などの効果があります。
脳の機能が高まると、思考スピードが上がったり、会話や文章をすばやく理解できたりします。
仕事や勉強でパフォーマンスが高いときはノルアドレナリンの分泌が活発になっているのです。
そんなノルアドレナリンにはデメリットもあります。
ノルアドレナリンによる緊張感は集中力を高めますが、強すぎるとストレスとなり精神の負担となります。
緊張し過ぎて言葉が出なくなるような状態は、ノルアドレナリンが過剰な状態でひどい場合にはパニックにつながります。
パニック障害などの疾患には、ノルアドレナリンの分泌を抑える薬が処方されます。
ノルアドレナリンが少ないと緊張感がなくなり脳の働きは低下します。
ですがノルアドレナリンが多すぎると、ストレスを感じやすくなり脳の働きが悪くなります。
つまりノルアドレナリンは重要な神経伝達物質ですが、少なすぎても多すぎても問題になるのです。
大切なのは東洋医学で言うところの中庸(ちゅうよう)で、必要な分が過不足なく分泌されている状態です。
ノルアドレナリンの分泌を高める
意識的にノルアドレナリンの分泌を促しパフォーマンスを高める方法もあります。
それは、
- 締切を設定する
- 時間の制限を作る
- 運動をする
- 嗅覚を刺激する
- 視覚を刺激する
などです。
人は締め切りなどの区切りがあった方が集中力が高まります。
また一日の中でも時間制限を設けるのも効果的です。
そして、締め切りや時間制限の目標を達成すると快感をもたらすドーパミンが分泌されます。
分泌されたドーパミンはノルアドレナリンへと変化するので、立てた目標を達成しやすくなる良いサイクルが生まれます。
時間制限を設けるとノルアドレナリンが分泌され、時間通りに作業を終わらせるとドーパミンが分泌されます。
普段から時間制限を達成する習慣を身に付けることで、ドーパミンやノルアドレナリンが分泌されやすくなり仕事や勉強も楽しく感じられます。
ただしノルアドレナリンによる緊張感は長続きしませんので、時間制限は2~3時間くらいの短いスパンで区切りましょう。
だから締め切りが1ヶ月後なら、毎日の2~3時間を区切って何をするかを決めましょう。
また運動することも脳に刺激を与えて、ノルアドレナリンを分泌できます。
そのため疲れていても、朝に身体を動かした方が集中力ややる気が高まるのです。
運動といっても、10~20分ほどの散歩でも十分に効果があることが分かっています。
特に楽しく感じられるリズム運動が効果的なので、朝からダンスをするのもおすすめです。
また楽しいリズム運動は、ノルアドレナリンだけでなく残りの三大神経伝達物質であるドーパミンとセロトニンの分泌も期待できます。
最近の研究では、アロマオイルなどで嗅覚を刺激するのもノルアドレナリンの分泌を促すことが分かっています。
アロマオイルの中でもノルアドレナリン分泌を促すのは、
- グレープフルーツ
- ローズマリー
などです。
グレープルーツに含まれる香り成分のリモネンはノルアドレナリンの分泌を促し交感神経を亢進させることが昔から分かっています。
ローズマリーに含まれるカンファーという香り成分には、頭をすっきりさせ明るい気持ちにし、集中力や記憶力を向上させる効果があることが分かっています。
スポーツ観戦などで選手に感情移入して、共に闘っている感覚を味わうとノルアドレナリンが分泌されます。
身体を動かしている人に共感することでも人はノルアドレナリンが分泌されるので、スポーツに限らず映画などでも同様の効果が得られます。
朝から気持ちを上げる香りを嗅いだり、テンションが上がるような映像を見たりするのは一日のやる気を高めるのに効果的なのです。
食事も意識してみよう
ノルアドレナリンの原料となるのはアミノ酸のチロシンです。
チロシンからドーパミンが作られ、ノルアドレナリンが合成されます。
チロシンを含む代表的な食品は、
- 豆腐
- 納豆
- 枝豆
- きな粉
などの大豆食品です。
大豆は自律神経を整えるスーパーフードです。
大豆に含まれるレシチンはアセチルコリンの原料となり、チロシンがノルアドレナリンの原料となります。
そのため神経伝達物質の生産には、大豆食品が最適なのです。
チロシンは他にも、
- 鶏肉
- 魚介類
- 乳製品
などにも多く含まれています。
成人になると脳の神経細胞は1日平均10万個のが死滅すると言われます。
そのため意識して神経細胞を再生するたんぱく質が重要です。
大豆食品は神経伝達物質を作るだけでなく、神経細胞を作るのにも効果的なので神経を元気に保つのに極めて重要な食品です。
まとめ
三大神経伝達物質であるノルアドレナリンが不足するとうつ症状などの原因にもなります。
そのためやる気や集中力が無い人は意識してノルアドレナリンの分泌を促しましょう。
普段から運動や食事を意識することで自律神経のバランスは整うので実践してください